長年担当させていただいている利用者様。
少し前から寝たきりのような状態になられ、
日に日に食事量も減ってきていました。
主治医からは90代半ばという年齢からしてそう長くはないだろうとの話がありました。
利用者様が入院等を一切拒否された事もあり延命的な事は一切しないとの方針を受け、往診や訪問看護、訪問介護で対応できるようなプランを作成しました。
延命治療をしないとはいえ、昔からの友人である主治医が頻繁に様子を見に行ってくれ、うちのサービス提供責任者に関しては時間を見つけてはサービス関係なく毎日様子を見に行ってくれ詳細を逐一報告してくれていました。
ケアマネにとってこれほど有難く心強い事はありません。
その日も訪問看護から血圧が下がっていると報告を受け、主治医やサービス提供責任者も駆けつけてくれました。
少し落ち着つかれたとの事だったので、私は仕事帰りに様子を伺いに行きました。
すると大きな声で水分を要求をされます。
(食事量が減ってからも水分だけはしっかり摂って下さっていました。)
嬉しくて何度も楽のみで水分を摂っていただきました。
「もういい」と仰ったので、声掛けしながらベッドの頭を下げようとすると顔をしかめて
「頭あげて!」「頭あげて!」と何度も仰います。
座位に近いほど頭を起こしたら納得され安心した表情をされます。
でも暫くしてまた頭を下げようとすると「頭あげて!頭あげて!」との事。
困りました。
私が帰った後、ご自身でベッドの高さ調節ができない方なので、
睡眠に支障のない程度までベッドの頭部分を下げて謝りながら帰ってきました。
次にヘルパーが入った時にはもう冷たくなっておられ、
それが利用者様との最後のお別れになってしまいました。
毎日様子をみに行ってくれていたサービス提供責任者ではなく、
最後にお会いできたのは私で何だか申し訳ないような気がしました。
あれほど頭を下げるのを嫌がっておられたのは、
ご自身の最後を悟られていたのかもしれません。
利用者さんからの最後のお願いだったのに聞いて差し上げられなかった事が悔やまれます。
最期を自宅で迎えるという事は、利用者様の想いに寄り添える事でケアマネ冥利に尽きる満足感があると同時に、不安でたまらないのが本音です。
そんな中、主治医はじめ、看護師、訪問介護スタッフのお陰でご本人の希望通り自宅で最期を迎える事ができました。
色々な事情でご家族と縁が薄い方でしたが、先生も看護師さんも心から利用者様に関わってくれました。
特に当事業所のサービス提供責任者やヘルパーが担当してくれた事が何より心強かったです。皆さん本当に有難うございました。
数年前はかくしゃくとしてダンディーだった利用者様。
気性が激しく近寄りがたい感じでした。
声を荒げたりする事もありましたが、何故か憎めない方でした。
寝たきりになられてからも、自己主張はハッキリされていましたが、
水分を摂ったあとの「美味しい~」という言い方がとっても愛おしかったです。
最初は疎ましがっておられた私の訪問も次第に待って下さるようになり、
本当に沢山お話ししてくださいました。
人と話すのが嬉しい。
また来てよ
と言って下さいました。
信頼関係を築くのに時間が掛かった方が受け入れて下さった後の嬉しさは大きいものですね。
今まで本当にお世話になりました。
心よりご冥福をお祈り申し上げます。