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大切な人ががんになったとき【前篇】

ある冊子に緩和ケアセンター長の書かれた記事が載っていました。他人事ではないなと思ったのでご紹介させて下さい。

 

大切な人ががんになったとき

「がん」と聞いたときに衝撃を受けるのは、本人だけではありません。

家族や友人、職場の仲間もショックを受け、何とかできないか、自分ができることは?と思います。何かせずにおれない。その人のために祈ることもあるでしょう。

すぐにでも駆けつけて支えたい、力になりたいと思うのは自然な気持ちです。

 

一方、その人が自分にとって、大きな位置を占める人であればあるほど、自分の衝撃も動揺も大きく、取り乱して、逆に相手への配慮を失うこともあります。

あらゆる情報を集めて、あの病院・この医者・この薬と勧める。「身体に良い」「抗がん剤の副作用が軽くなる」と言って持ってきた、各種サプリメントや健康食品、高額な民間薬が患者んさんの枕元にずらりと並ぶことも、よくあります。

患者さんから、「本当は飲みたくないけど、角が立つから、先生がダメって言った、っていうことにしてもいい?」と言われる事も多いのです。

 

 

お見舞いあれこれ

 

入院して、誰も来てくれないとしたら、見捨てられたような、忘れられたような気持ちになるかもしれません。

でも、病院にはプライバシーがありません。

カーテンやドア一枚で仕切られ、寝衣でいるところに、面会時間中ならいつでも人がやってきて拒めないところでもあります。心も体も弱ったときに、乱れた容姿を人目にさらしたくないという方もおられます。

それなのに、義理や世間体で来られたら、たまったものではありませんよね。

来てもらうとお返しが大変だから、と、病気や入院を周囲に内緒にする人。そ

のため近所での入院を避けている人。

せっかく来てくれた方に、失礼が無いようにと気を張って、起き上がったりしてくたびれてしまう本人や家族を大勢みてきました。

 

すごく逢うのが楽しみなお孫さんであっても、病気の衰弱のために、長く相手をすると疲れてしまって不機嫌になってしまい、あとで後悔するおじいさん・おばあさんもいます。

「元気そうだね、今日は顔色も良いし良かったわ、安心した」と言われ、内心…あなたが良くても、私は良いことない。

見舞い客に気をつかって、気を張って元気そうに振る舞っていることがわからないのかしら…と思う。

帰られた後は熱が出ます。

主治医が「面会謝絶」の札を貼りたくなるときです。

でも、こういう方は「身内同然の者だから」「遠方から来たから」と、面会時間すら無視して入って来られるのです。

遠方なのは、患者さんではなく、「あなた」の都合ですよね。

 

皆さん、善意で患者さんへの思いにあふれて駆けつけるのですが、懸命なあまり、つい本人の気持ちではなく『私が何かする』ことの方に意識が向いてしまいがちです。

私の大事な人を力づけたい、励ましたいと思う。

「今日はほら、こんな良い天気よ、気持ちが良いわね」…私の気持ちは最悪なのに。

人が死ぬかも知れない病気の時に、よくお天気の話だのできるわね…ということだってあります。

励まそうとしてかけた言葉、何気ない会話でも、本人の気持ちを逆なでしたり、傷つけていることがあります。

 

(次回へ続く)

 

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